2017 8/1
今日は主に私のインプラント日記を見てくださっている歯科医師の先生の方々に向けて書かせて頂きたいと思います。
日常よく目にすることのあるインプラント周囲炎ですが、そのほとんどが清掃不良による細菌感染から来ているものだと思います。(ブラキシズムや過大な荷重によるものもあるでしょう)
ただ今日言いたいことは日本歯科評論8月号にも載りました細菌感染を主因としないインプラント周囲炎があるという事です。
私が経験した症例ですが、右下6,7番にインプラントを埋入し10年間問題なく経過してきたケースです、昨年の春のチェックの時7部インプラントに少々骨吸収が見られたので近いうちに掻破デブライトメントをしましょうと予定を組んでおりました。
ただこの時すでに脊柱管狭窄症のオペをされて日本で認可されたばかりのヒト型抗体RANKLモノクローナル抗体製剤(デノスマブ)薬品名プラリアの注射を受けておられました、(骨密度が基準値を下回って来た為)
そしてその後1年半ほど来院が途切れてしまいます、理由は健診で大腸に癌が見つかり、またご主人も体調を崩され長期入院になってしまった事によるものでした。
幸いにもご本人のオペは腹腔鏡にて施術でき完治されたとのことで久しぶりに来院されました、パノラマを撮影させていただきますと左下7部インプラント周囲に広範囲に骨の吸収透過像を確認いたしました。
10年間は全く問題なく経過してきた方でしたので、デノスマブのことを問いただしてみますと10か月程前から中止しているとのことでした、どうも新薬の為か腰や節々がかなり痛くなる副作用に見舞われ、今では活性型ビタミンD3薬に切り替えてもらっているとのことでした。
★ここでBP製剤(ビスフォストネート)、と抗RANKL製剤(デノスマブ)の作用機序を整理しておきましょう。
BP製剤は(破骨細胞を細胞死へと誘導する)ことが薬剤の作用であり、デノスマブは(破骨細胞前駆細胞が破骨細胞へ分化、増殖することを阻害、破骨細胞が増殖、生存することを阻害する)ことが薬剤の作用であります。
この患者様の骨吸収像も一般的な細菌感染によるものではないと考え早期の撤去を局所麻酔下で行いました、インプラントと一体化した腐骨片を除去し残りの腐骨を除去掻破してオペ終了です、
★BP製剤、デノスマブ剤はインプラント周囲骨吸収のリスクが大きくなることを認識しておいてください、
また高齢の患者様ほど処方されている薬の処方変化を常に主治医としてしっかり把握しておかなければいけませんね!!!
★最後の2枚の画像を見てください!インプラントとのインテグレーション(骨結合)が失われてのロストではないことがお解りになると思います。!!(明らかにデノスマブ剤による副作用ですね。!)
★今や超高齢化社会です、いかなる症例、症状に対してもしっかり対応できる知識、技術を身に着けておく必要があると考えます。!